社内で起こるさまざまな課題の解決には社内SNSが役立ちます。一方で、SNS導入に失敗している会社も少なくありません。予備知識が十分ではない状態でSNSを利用しても、期待していた業務改善は達成できません。そのうえで、失敗例から注意すべきポイントを学んでいきましょう。この記事では、社内SNSの失敗例について解説します。
SNSといえば、不特定多数のユーザーが匿名で使っているメディアというイメージが強くあります。それらに対して、社内SNSとは同じ会社内の従業員だけで共有するSNSのことです。場合によっては匿名性が薄く、誰がどんな情報を発信したかは見えやすい仕組みになっているときもあるのが特徴です。
社内SNSを有効活用すると、解決できる課題には「部署の閉塞性」があります。会社ではさまざまな部署がありますが、ともすれば、ふだんの交流が断絶され他部署への理解がないまま仕事を行っている状態が日常化します。しかし、社内SNSを使えば他部署の動きも明確に分かるので、コミュニケーションが容易になるでしょう。
「社員のメンタルケア」にも役立ちます。仕事や人間関係で悩み事を抱えていても、「身近な上司や先輩には相談しにくい」と思っていた場合、SNSで他部署の人間にも秘密で相談できます。そのほか、相談とまではいかなくても、他人のポストを目にして意外なところから問題解決のヒントを得ることも可能です。
そのほか、「会社への不満を可視化する」のも社内SNSの大きな役割です。社員に不満がたまっていたとしても、肝心の経営陣や人事部には伝わっておらず、的外れな対処をしてしまうケースは少なくありません。しかし、社内SNSをのぞけば、どんな問題に対してどんな不満が蓄積されているのかが一目瞭然となります。口に出せば喧嘩になりかねないテーマも、SNSへの投稿にすれば穏便なまま生産的な議論が展開できます。
本来は便利なはずの社内SNSも、あまり効果を挙げられないまま放置されてしまう場合があります。こうした失敗例として、代表的なのは「投稿者の少なさ」です。参加者からの投稿が少なく、結果的に人事担当者などSNSの運営側だけが情報発信をする場になってしまうと、社内SNSは浸透していきません。
社内SNSは全社向けの情報発信ツールです。主幹部署以外の部門が全社にアナウンスしたいことがある際に使えます。また、個人が複数のメンバーに対して情報発信したり、質問したりするときに有益だと感じてもらわなければなりません。こうしたメリットを理解できないまま社内SNSを導入しても、社員は「特に必然性を感じない」と思ってしまいがちです。
社内SNSに対し、社員からポジティブな印象を持ってもらえないと、管理者に負荷がかかっていきます。少ない投稿のため、メンテナンスをしたりアナウンスを行ったりするのが苦痛になっていくでしょう。その結果、運用が継続しないばかりか、一部の人しか見ていないツールだという感想を抱かれてしまいます。そもそも、会社には年代的にSNSへのなじみが薄く、抵抗感を覚える人もいます。急に社内SNSを導入しようとしても成功しづらいのは当然です。時間をかけて、社員教育をほどこしていくようにしましょう。
社内SNSは「コミュニケーションツール」として効果的です。普通に働いているだけでは、同じ会社内にも知らない人間がたくさん生まれてしまいます。しかし、社内SNSで交流をしていると、いざ仕事で接点が生まれたときにも円滑にコミュニケーションを行えるようになるでしょう。
ところが、コミュニケーションツールとして社内SNSを導入している場合でも、あまり投稿が盛り上がらないときがあります。なぜなら、SNS上で発言して全参加者に見られてしまうことに慣れない人がいるからです。足場が固まっていない新入社員、中途採用者などは特に、いきなり全員の前で自分の意見を述べるのは勇気がいるでしょう。
解決方法として、スモールスタートが挙げられます。最初から全員を巻き込むのではなく、まずは限られた人数からSNSを盛り上げていきます。そして、SNSが活性化した状態から徐々に参加者を拡大していく方法です。また、「コミュニティ」などを多用するのも有効でしょう。SNSでは趣味、価値観などが合う人間が募る「コミュニティ」と呼ばれる空間があります。まずは気の合う参加者同士で交流を深め、SNSになじんでもらいます。そして、徐々にコミュニティを大きくしていったり、コミュニティ外の人間とも接するようになったりしていけば、SNS全体の盛り上がりにもつながっていくでしょう。
社内SNSでは、経営者や役員など上層部の人間も参加するのが基本です。むしろ、現場の意見を吸収し、会社の方針決定に役立てられるのも社内SNSの魅力です。ただし、上層部が「単なる1ユーザー」の立場をとってしまうと、かえってSNSの盛り上がりを阻害しかねません。社員が発言するのに萎縮したり、上層部の発言が無条件に賛同を集めたりする状況を招く恐れがあるからです。
そこで、経営者や役員は社内SNSの運営者として中身に触れながらも、参加者と同じ立ち位置でいることは控えましょう。会社情報や会社の舵取り、ミッションなどを発信する立場で情報発信を行うのが得策です。むしろ、社内SNSは上層部の仕事ぶりを社員に分かりやすく伝えるための空間になりえます。SNS上で「いかにして会社が舵取りされているのか」を現場に温度感を持って伝えることも役員や経営者の役割です。
また、上層部のユーザーはその言葉の一つ一つが上滑りしないように気をつけましょう。どうしても、上層部の発言は他の社員よりも注目度が高くなりがちです。せっかく議論が活性化していたとしても、上層部の発言ひとつで場が終わってしまうようなケースも十分ありえます。上層部はあえて自らのプライベートや人間的な一面を晒すことも現場との距離を埋める第一歩です。
いくら便利な道具があっても、何のために使うのか、その道具を使って何をしたいのかがわかっていないと上手に使えません。そして、社内SNS導入に失敗する企業でも目的が不明瞭になる傾向があります。経営トップの鶴の一声や「とりあえず社内のコミュニケーション活性」などの曖昧な目的で社内SNSを導入するのは危険な兆候です。具体的な運用イメージを持たずに利用を開始すると、ユーザーは何が書かれているのか、また何を書けば良いのかわからず関心が薄れていき、最終的には使われなくなってしまうからです。
社内SNSを導入する際には、事前に目的とゴールを決めておきましょう。「社内コミュニケーション活性」は過程であり、ゴールにはなりにくいといえます。「残業を減らす」のがゴールだとすれば、「社内SNSによって部署間の連絡をスムーズにし、業務効率化を目指す」ことを意識して利用します。そして、こうした意識を社内全体で共有することが大切です。なお、社内SNSはさまざまな種類があり、社風や業種によって適切なツールが変わります。会社のゴールと目標を定め、実現しやすいツールを選んで導入するように心がけましょう。
社内SNSはユーザーが情報発信したい、得たい情報がある、という両側面を満たさない限り成功しません。たとえば「エアリー」では、導入前に課題や目的を整理し、いかにユーザーに理解してもらうかを支援することで、社内SNSの導入失敗を回避しています。社内SNSは目的意識が薄い状態で利用していると、ユーザーが必要性を理解しないまま廃れていく傾向にあります。ユーザーがSNSにしっかり参加している実感を持てるツールを選ぶことも大事なポイントでしょう。